AI翻訳で、質問の意味が変わっていませんか?
― 調査票翻訳で大切なこと ―

AI翻訳の進化によって、海外向けの調査票も短時間で多言語化できるようになりました。

数十問、数百問あるアンケートでも、AIを使えば瞬時に翻訳できます。スピードやコストを考えれば、非常に便利な時代になったといえるでしょう。

しかし、調査票翻訳には一つ、大きな注意点があります。

文章として正しく翻訳されていることと、調査票として正しく機能していることは、必ずしも同じではありません。

「単数」か「複数」か。それだけでも回答は変わる

例えば、日本語で、「利用したことのあるサービスを選んでください」という設問があったとします。

日本語では、名詞そのものを見ても、それが一つなのか複数なのかが明確でない場合があります。また、「選んでください」という文章だけでは、前後の情報がなければ単一選択なのか複数選択なのかを判断できないケースもあります。

ところが、英語をはじめ、言語によっては単数・複数をより明確に表現する必要があります。

本来は「当てはまるものをすべて選択してください」という複数回答の質問なのに、AIが一つだけを選ぶような表現に翻訳してしまったら、どうなるでしょうか。

回答者は、一つしか選んではいけないと思って回答するかもしれません。

これは単なる「少し不自然な翻訳」ではありません。

集まる回答そのものが変わってしまう可能性があります。

そして、そのデータをもとに商品開発やマーケティング、消費者分析などを行えば、その後の判断にも影響することになります。

調査票には「設問だけでは見えない情報」がある

AI翻訳で難しいのは、設問一文だけからでは判断できない情報です。

「一つ選択」なのか「複数選択」なのか。

「過去1年間」について聞いているのか、「現在」について聞いているのか。

前の質問で「はい」と答えた人だけが回答する質問なのか。

選択肢同士が同じレベルの概念として並んでいるのか。

こうした情報は、文章だけを翻訳していても見落とされることがあります。

調査票は、一つひとつの設問が独立しているわけではありません。

調査目的、設問、選択肢、回答条件、前後の質問がつながって、一つの調査として成立しています。

だからこそ、調査票翻訳では「この日本語を外国語にするとどうなるか」だけではなく、「この質問で何を調べたいのか」を理解することが重要なのです。

多言語化すると、さらに難しくなる

英語、中国語、韓国語、タイ語、ベトナム語など、複数の言語で同じ調査を実施する場合には、さらに注意が必要です。

言語によって文法も違えば、自然な質問の仕方も違います。

日本では一般的な商品カテゴリーや店舗形態、生活習慣が、別の国ではそのまま通用しないこともあります。

単語を正確に置き換えるだけではなく、

「各国の回答者が、できるだけ同じ意図の質問として理解できるか」

という視点が必要になります。

調査票の多言語化で本当に揃えるべきなのは、「言葉」だけではありません。

回答者が受け取る質問の意味を揃えることが重要なのです。

AI翻訳を「使わない」のではなく、「どう使うか」

もちろん、私たちは調査票翻訳にAIを使うべきではない、と考えているわけではありません。

大量の設問を短時間で処理できるAI翻訳は、調査票の多言語化でも大きなメリットがあります。

重要なのは、AI翻訳されたものを、そのまま完成品と考えないことです。

AIで下訳を行い、その後、原文と訳文を照合しながら人が確認・修正する「ポストエディット」という方法もあります。

その際、必要なのは文法や単語のチェックだけではありません。

「この設問の目的は何か」
「回答形式と訳文は一致しているか」
「前後の設問との関係は保たれているか」
「この表現で現地の回答者に同じ意味が伝わるか」

そこまで確認して、初めて調査に使用できる翻訳になります。

調査票翻訳の品質は、調査結果の品質につながる

調査票では、わずかな表現の違いが回答者の判断を変えることがあります。

だからこそ、AI翻訳の精度がどれほど向上しても、最終的に大切なのは「正しく訳されているか」だけではありません。

「調査の目的どおりに回答してもらえる質問になっているか」まで確認すること。

NAIwayでは、これまでさまざまな分野の調査票翻訳・多言語化に携わってきました。

人による翻訳だけでなく、AI翻訳後のポストエディットについても、原稿の内容や対象言語、調査目的に合わせた対応をご提案しています。

AIのスピードを活かしながら、人の目で調査の意図を確認する。

これからの調査票翻訳では、その両方を上手に組み合わせることが、信頼できる調査結果につながっていくのではないでしょうか。