はじめに

日用品の海外商品を調べたり、ECサイトの商品説明を翻訳したりするとき、「外国語を日本語に訳せば十分」と考えてしまいがちです。

しかし、洗剤、衣類、キッチン用品、掃除用品などの日用品は、単なる言葉の置き換えだけでは正確な情報を伝えられない場合があります。

特に重要なのが、翻訳とファクトチェックを分けて考えることです。

原文に書かれている内容を正しく日本語にする作業と、その内容が事実なのか、現在も有効なのかを確認する作業は、似ているようで別の仕事です。

翻訳で注意したい「日用品特有の表現」

日用品の商品説明には、一般的な文章とは異なる表現が多く登場します。

例えば英語の「stain remover」は文脈によって「しみ抜き剤」「シミ取り剤」などと訳せます。

「cleaning spray」も、単純に「クリーニングスプレー」とするより、「掃除用スプレー」など、実際の用途が伝わる日本語にしたほうが自然な場合があります。

また、「natural」「gentle」「powerful」「eco-friendly」といった宣伝表現にも注意が必要です。

「natural」を「天然」と訳したからといって、その商品が完全に天然由来であるとは限りません。

「eco-friendly」も「環境に優しい」と直訳できますが、何を根拠に環境負荷が低いのかは原文だけでは判断できないことがあります。

つまり、翻訳者が文章を読みやすく整えることと、商品の性能や安全性について保証することは別問題です。

宣伝文句を事実として断定するような翻訳は避ける必要があります。

ファクトチェックでは「公式情報」を優先する

日用品の情報を確認するときは、検索結果の上位に出てきた記事だけを根拠にしないことが重要です。

まず確認したいのは、メーカーや販売元の公式情報、商品のパッケージ、取扱説明書、そして行政機関などの公的情報です。

日本で販売される家庭用品については、消費者庁の「家庭用品品質表示法」関連情報も重要な確認先になります。

同法は、対象となる家庭用品について、品質に関する表示事項や表示方法を定め、消費者が購入時に適切な情報を得られるようにすることを目的としています。

ただし、「日用品」という言葉が指す範囲すべてが同じ法律の対象になるわけではありません。

家庭用品品質表示法では、対象商品が繊維製品、合成樹脂加工品、電気機械器具、雑貨工業品のうち政令などで指定されたものに限られます。

この点もファクトチェックでは大切です。「日用品だから法律で表示が義務付けられている」と一括りにするのではなく、その商品が具体的にどの制度の対象なのかを確認する必要があります。

弊社では、商品の名称などもネイティブ作業者が一つ一つチェックします。

ヘアカラー剤、肌に貼るシート状の製品、アイケア製品など様々な製品に関する対応経験がありますので、作業者の方でも単に翻訳するだけでなくファクトチェックについても熟知しております。

「翻訳できた」と「正しい」は違う

例えば海外商品の説明に「safe for everyday use」と書かれていたとします。

これを「毎日安全に使用できます」と訳すこと自体は可能ですが、「安全」という言葉には非常に強い意味があります。

原文がメーカーによる広告表現なのか、使用方法についての説明なのか、それとも第三者機関による評価なのかによって、情報の重みは変わります。

そのため、翻訳後の文章では「メーカーは〜と説明しています」「商品説明には〜と記載されています」のように、情報の出どころを明確にする方法が有効です。これなら原文の主張と、翻訳者自身が確認した事実を混同しにくくなります。

実践したい4段階のチェック

日用品の記事や商品紹介を作る場合は、次の順番で確認すると効率的です。

  1. 原文を正確に読む
    商品名、用途、成分、素材、容量、使用方法などを整理します。
  2. 自然な日本語に翻訳する
    直訳にこだわらず、日本の読者に意味が伝わる表現を選びます。ただし、原文にない性能や効果を追加しないことが基本です。
  3. 公式・公的情報と照合する
    メーカーの公式ページ、説明書、公的機関の情報などを確認します。
  4. 事実と広告表現を分ける
    「○○である」という事実なのか、「メーカーが○○をうたっている」という主張なのかを区別します。

特に成分、使用上の注意、対象となる素材、耐熱温度などは、誤訳がそのまま使用上のトラブルにつながる可能性があります。数字や単位も、原文から日本語にするときに必ず再確認したいポイントです。

信頼される記事は「訳す+疑う」が基本

日用品についての翻訳では、文章を自然な日本語にする技術だけでなく、「この情報は本当に正しいのか」と一度立ち止まる姿勢が重要です。

翻訳は原文の情報を伝える作業、ファクトチェックはその情報の根拠や現在の正確性を確認する作業です。

両者を組み合わせることで、単に読みやすい記事ではなく、読者が安心して判断材料として利用できる記事になります。

なお、日本国内で販売する家庭用品については、対象商品によって日本語での法定表示が必要となる場合があります。

消費者庁も、国内消費者向けに対象商品を輸入販売する場合には、家庭用品品質表示法に基づく表示を適正に行う必要があると案内しています。

日用品は私たちの生活に身近だからこそ、「たぶんこういう意味だろう」という思い込みを避けることが大切です。原文を正しく訳し、根拠を確認し、事実と宣伝を区別する。この3点を意識するだけでも、日用品に関する翻訳記事の信頼性は大きく高められるでしょう。