はじめに
海外の料理や日本の食品を楽しむうえで、「食べ物の翻訳」は欠かせないものになっています。
レストランのメニュー、食品パッケージ、原材料表示、アレルギー情報など、私たちが目にする食品関連の情報は意外に複雑です。
しかし、食品の翻訳では「日本語を英語に置き換える」だけでは十分とはいえません。
特に原材料やアレルギー、栄養、産地などに関する情報では、翻訳と同時に**ファクトチェック(事実確認)**を行うことが重要です。
食品の翻訳が難しい理由
食品名には、その国や地域ならではの文化や調理法が含まれています。
たとえば「だし」を単純に “soup” と訳してしまうと、本来の意味が伝わりません。
「だし」は料理の味を支える出汁そのものを指し、かつお節、昆布、煮干しなど、さまざまな材料が使われます。
同じように、「おでん」「味噌汁」「漬物」「和え物」なども、単純な直訳では料理の特徴を十分に説明できない場合があります。
つまり食品翻訳では、言葉の意味だけでなく、「何が入っていて、どのように作られ、どんな料理なのか」という背景まで考える必要があります。
「翻訳できた」と「正しい」は別問題
ここで重要になるのがファクトチェックです。
翻訳AIや翻訳アプリは、外国語の文章を理解するうえで非常に便利です。
しかし、翻訳された文章が必ずしも食品について正確な情報を示しているとは限りません。
たとえば、商品ラベルに「原材料名」と書かれていた場合、そこに記載された材料を正確に読み取ることと、その材料が「健康に良い」「安全である」と判断することは別の問題です。
「無添加」「天然」「ヘルシー」「低カロリー」といった表現も、翻訳するだけでは意味を十分に理解できません。
実際にどのような基準で表示されているのか、公式資料や食品表示制度などを確認する必要があります。
日本の食品表示については、消費者庁が食品表示制度に関する資料を公開しています。
日本国内で販売される食品の表示は原則として日本語で行われるため、外国人に情報を伝える場合にも、まず元の日本語表示を正確に確認することが大切です。
特に注意したいのがアレルギー情報
食品翻訳で最も慎重さが求められる分野の一つが、アレルギーに関する情報です。
消費者庁によると、食物アレルギーは食品に含まれるたんぱく質などを身体が異物として認識し、過剰な反応を起こすものです。加工食品については、健康被害を防ぐ観点から、特定のアレルゲンについて表示が義務付けられています。
しかも、食品表示のルールは固定されたものではありません。たとえば2026年4月1日からは、カシューナッツが特定原材料に追加されました。
このような情報は、古い記事や古い翻訳データだけを参考にすると間違える可能性があります。
そのため、アレルギーに関する翻訳では、
①元の食品表示を確認する
②現在の制度を確認する
③翻訳する
④重要な部分をもう一度ファクトチェックする
という手順が有効です。
AI翻訳を上手に使うポイント
AI翻訳は食品情報を理解するための便利な補助ツールです。
しかし、特に健康や安全に関係する情報では、「AIがそう訳したから正しい」と考えないことが重要です。
おすすめなのは、AIを「最終回答を出す機械」ではなく、情報を整理するアシスタントとして利用する方法です。
たとえば食品ラベルを翻訳するときには、「原材料を一つずつ訳してください」「アレルゲンに関係する可能性がある言葉を抜き出してください」のように依頼すると、確認すべきポイントを整理しやすくなります。
そのうえで、重要な情報についてはメーカー、消費者庁などの公的機関、商品パッケージの原文を確認します。
消費者庁も外国人向けに食品表示制度の多言語資料や、食物アレルギーを伝えるためのコミュニケーションシートを公開しています。
食品翻訳で大切なのは「正確さ」と「伝わりやすさ」
食品の翻訳では、単語を正しく訳すだけでは十分ではありません。
「これは何の食品なのか」「どんな材料が使われているのか」「どの情報が確実なのか」「どこから先が推測なのか」を区別する必要があります。
特にアレルギー、宗教上の食事制限、健康情報などが関係する場合には、翻訳ミスが単なる「意味の違い」では済まない可能性もあります。
だからこそ、食品翻訳では翻訳+ファクトチェックという考え方が重要です。
AIや翻訳アプリを活用しながらも、最終的には原文と信頼できる情報源を確認する。
このひと手間が、食品情報を「なんとなく分かる情報」から「安心して判断するための情報」へ変えてくれます。
これから外国人旅行者向けのメニューや食品情報を翻訳する場合も、単なる直訳を目指すのではなく、正確で、文化的背景が伝わり、必要な人が安全に判断できる翻訳を目指すことが大切です。
弊社において、海外で実施されるアンケート調査の多言語翻訳案件を対応することがありますが、
現地で一般的な単位(例えば、日本ではkcalの表示が一般的ですが、オーストラリアではkJと表示されることが多いので単位を変更)を用いるようにしたり、
言語の転換だけにとどまらないローカライズまで対応した翻訳作業をおこなっております。




