「英語ならどこの国でも同じ」ではない? 翻訳で大切な“その国らしさ”

「英語に翻訳してください」
そうご依頼いただいたとき、私たち翻訳会社では、実はもう一つ確認することがあります。

「どこの国で使う英語ですか?」

英語なら英語で、どこの国でも同じじゃないの?と思われるかもしれません。もちろん、英語そのものは共通の言語ですし、アメリカの人がイギリスの英語を読めない、なんてこともありません。
ただ、実際に文章を作っていくとなると、話は少し変わってきます。

以前、弊社の「翻訳会社の雑学辞書トピック」で、英国式英語と米国式英語のスペルの違いについて紹介したことがあります。

たとえば「judgement」と「judgment」。
どちらも「判断」という意味ですが、前者は英国式、後者は米国式として使われています。ほかにも「colour」と「color」、「centre」と「center」など、よく知られている違いがあります。

こうした違いは、翻訳をしていると意外と目につくものです。

英語にも「その国らしさ」がある

英語を使う国といえば、まずアメリカやイギリスを思い浮かべる方が多いと思います。

しかし、英語を公用語・主要言語として使っている国は、それだけではありません。オーストラリア、カナダ、マレーシア、フィリピンなど、それぞれの国で英語が使われています。
もちろん基本的な英語は共通していますが、国が変われば、単語の選び方やスペル、言い回しなどに少しずつ違いが出てきます。

たとえば、日本で「英語の資料を作る」と聞いたとき、特に指定がなければアメリカ英語を思い浮かべることが多いかもしれません。
ところが、それをイギリス向けの資料として公開するのであれば、英国式のスペルに合わせた方が自然ですし、オーストラリアやカナダなど、別の国が対象であれば、その国で一般的に使われている表現を確認する必要があります。

弊社のコーディネーターとしても、「英語だから英語の翻訳者にお願いすればOK」と単純に考えるのではなく、「誰に向けた文章なのか」を確認することはとても大切です。

スペイン語も、ポルトガル語も違う

そして、こうした違いは英語に限った話ではありません。

たとえばスペイン語。
スペインで使われているスペイン語と、メキシコなど中南米で使われているスペイン語では、同じスペイン語でも違いがあります。
単語の使い方や表現、地域によって異なる言い回しなどもあり、「スペイン語なら一つにまとめてしまえばいい」というわけではありません。

ポルトガル語も同様です。
ポルトガルで使われるポルトガル語と、ブラジルで使われるポルトガル語では、スペルや表現などに違いがあります。実際に翻訳のご依頼をいただく際にも、「ポルトガル向けなのか、ブラジル向けなのか」は重要な確認事項の一つです。

つまり、翻訳では「何語にするか」だけではなく、「どこの国・地域で使うのか」まで考える必要があるということです。

「スイスのフランス語」というお問い合わせ

先日、弊社にもスイスで使用するフランス語・ドイツ語・イタリア語についてのお問い合わせがありました。

スイスといえば、複数の公用語がある国として知られていますが、ここでも「フランス語ならフランスと同じ」「ドイツ語ならドイツと同じ」と簡単に考えることはできません。
たとえば、学校などではフランスで使われている教科書を使用しているけれど、実際に日常で話されている言葉には地域ならではの違いがある、といったケースもあります。

「読めるか、読めないか」だけで考えれば、問題なく通じる文章なのかもしれません。
でも、現地の人が読んだときに、

「意味は分かるけれど、なんだかフランスっぽいな」
「文法的には間違っていないけれど、ここではあまりこういう言い方はしないな」

と感じるのであれば、それは必ずしも「現地向けの文章」として最適とはいえません。
翻訳会社が気にしているのは、まさにこういう部分です。

AIに聞けば、全部分かる?

AI翻訳はとても便利なツールですし、大量の文章を短時間で翻訳したい場合など、人間だけでは時間がかかる作業を効率化することができます。
だからこそ、私たちもAI翻訳を「使わない」のではなく、どうすれば機械翻訳の力を最大限に活かせるのかを考えています。

そのために必要なのが、人による確認や調整です。

原稿をAI翻訳に適した状態に整える。
AI翻訳の結果を確認する。
必要に応じてネイティブによるポストエディット(PE)を行う。
翻訳後のレイアウトを確認する。
そして、最終的に「これならそのままお客様に使っていただける」ところまで仕上げる。

AI翻訳そのものは速くても、その前後には、人だからこそできる作業がたくさんあります。

AI翻訳のフォローは翻訳会社にお任せください!

最近では、こうした疑問もAIに聞けば簡単に答えてくれるようになりました。

「イギリス英語とアメリカ英語の違いを教えて」
「スペインとメキシコのスペイン語は何が違う?」
「この表現はスイスのフランス語でも使いますか?」

と聞けば、かなり詳しく説明してくれます。
とても便利な反面、難しいのが「AIが答えてくれた=その情報が正しい」とは限らないということです。

特に、地域による細かな言葉の違いや、最近使われ始めた表現、若い世代の言い回し、特定の地域だけで使われている言葉などになると、情報の正確性を判断すること自体が難しくなります。

たとえば、AIから「この表現は現地でも使われています」と回答されたとしても、本当に現地の人が日常的に使っているのか、それとも文法的には正しいだけなのか。
あるいは、昔は使われていたけれど、現在はあまり使われていない表現なのか。
こうしたところまで、文章だけを見て判断するのは簡単ではありません。

だからこそ、ネイティブに確認する

そこで重要になるのが、現地の言葉を実際に使っているネイティブによる確認です。
スペルの違いを見るだけなら、辞書やインターネットでも調べることができます。

しかし、

「文法としては合っているけれど、話し言葉ではこう言う」
「意味は通じるけれど、この国ではあまり使わない」
「この表現は若い世代には通じるけれど、年配の人には少し違和感がある」
「この地域では、こちらの単語の方が一般的」

といった細かな部分になると、やはり現地の言葉や文化に触れている人の感覚が頼りになります。
翻訳というと、「日本語を外国語に置き換えること」と思われがちですが、実際にはそれだけではありません。

誰に向けた文章なのか。
どこの国で使われるのか。
その国の人が読んだときに、自然に感じるのか。

そこまで考えて、初めて「伝わる翻訳」になるのだと思います。

「同じ言語だから大丈夫」と思う前に

翻訳を依頼するとき、「英語でお願いします」「スペイン語でお願いします」とだけ伝えていただくケースももちろんあります。それでも問題ない案件はたくさんあります。

一方で、海外向けの商品紹介、観光案内、広告、Webサイト、アンケートなど、「現地の人にどう受け取られるか」が重要になる文章では、どの国・地域を対象としているのかをあらかじめお伝えいただけると、より適した翻訳方法をご提案できます。

弊社では、単純な翻訳だけではなく、こうした言語や地域による違いを確認するローカライズやファクトチェックにも対応しています。

「この表現、本当に現地で使われていますか?」
「アメリカ英語ではなく、イギリス英語にしたい」
「スペイン向けではなく、メキシコ向けにしたい」
「この国の人が読んだときに違和感がないか確認してほしい」

そんなご相談でも構いません。
翻訳では、正しいか間違っているかだけではなく、「その場所で、本当に自然なのか」という視点も大切です。
同じ英語、同じスペイン語、同じポルトガル語でも、使われる場所が変われば、少しずつ「その国らしさ」が生まれます。

その小さな違いまで拾い上げて、より自然に、より正確に伝える。
それもまた、翻訳会社の仕事の一つなのです。

「この国向けなら、どういう表現が自然?
そんな疑問があれば、ぜひ一度ご相談ください。
AIや辞書だけでは分かりにくい、現地ならではの言葉や文化まで含めて、確認・ご提案いたします。