はじめに

海外のニュースやインタビュー、講演、SNS動画などを、日本語字幕付きで見る機会が増えています。

外国語の動画を日本語に翻訳することで、海外の情報をより身近に知ることができるようになりました。

一方で、動画を翻訳して紹介する際には、単に外国語を日本語に置き換えるだけでは不十分な場合があります。

特にニュース、政治、社会問題、科学、医療などの分野では、「何が話されているのか」と「話されている内容が事実なのか」を分けて考えることが重要です。

そこで大切になるのが、動画翻訳とファクトチェックです。

翻訳が正しくても、情報が正しいとは限らない

翻訳とは、外国語で話されている内容を別の言語で伝える作業です。

しかし、翻訳された文章が正確だったとしても、元の発言が事実であるとは限りません。

例えば、動画の中で「ある法律が昨年成立した」と発言していたとします。翻訳者がその発言を正確に日本語へ訳すことができれば、翻訳としては成功です。しかし、その法律が本当に昨年成立したのかについては、別途確認する必要があります。

つまり、「その人が何と言ったのか」と「その人が言ったことは事実なのか」は別の問題なのです。

この違いを理解しておくことが、動画を正しく伝えるうえで非常に重要です。

動画では「切り抜き」に注意する

動画のファクトチェックで特に注意したいのが、切り抜き動画です。

SNSでは、長時間のインタビューや講演の一部分だけを短く編集した動画が数多く投稿されています。

短い動画は見やすく、拡散されやすい一方で、前後の発言が省略されることで、本来とは違う意味に受け取られてしまうことがあります。

例えば、「私はその政策に反対です」という部分だけが切り抜かれていても、実際には「現在の内容については」という条件が付いていたかもしれません。その後に「修正されれば賛成できる」と続いていた可能性もあります。

そのため、できるだけ元動画を確認し、発言の前後まで見ることが大切です。

原文とニュアンスを確認する

動画翻訳では、まず「何と言っているのか」を正確に把握する必要があります。

外国語には、日本語にそのまま置き換えることが難しい表現があります。例えば、「可能性がある」という意味の表現を、翻訳の仕方によっては「~である」と断定的に受け取れる文章にしてしまうことがあります。

また、皮肉、冗談、比喩、専門用語なども、直訳するだけでは本来の意味が伝わらない場合があります。

特に重要な発言については、原文を確認し、言葉だけでなく、どのようなニュアンスで話しているのかまで考えて翻訳することが必要です。

ファクトチェックでは情報源を確認する

翻訳が終わったら、次に考えたいのがファクトチェックです。

ファクトチェックとは、発言や情報について信頼できる根拠を調べ、事実関係を確認する作業です。

法律についての発言なら法律そのものや公的資料、統計についてなら元となる統計資料、企業についてなら企業が公表している情報などを確認します。

SNS上の投稿や第三者のコメントだけを根拠にするのではなく、できるだけ元となる情報まで遡ることが重要です。

また、一つの情報だけで判断せず、複数の情報源を比較することも大切です。耐熱温度などは、誤訳がそのまま使用上のトラブルにつながる可能性があります。数字や単位も、原文から日本語にするときに必ず再確認したいポイントです。

「事実」と「意見」を区別する

動画をチェックするときには、「事実」と「意見」を区別する必要があります。

例えば、「この国の経済成長率は5%だった」という発言は、統計資料などと比較して確認できます。

一方、「この政策は最悪だ」という発言は、その人の評価や意見です。もちろん、その意見の根拠を検討することはできますが、単純に「正しい」「間違っている」と判定できるものではありません。

確認できる事実と、個人の意見や評価を混同しないことが大切です。

「字幕があるから正しい」とは限らない

日本語字幕が付いている動画を見ると、内容について誰かが確認してくれているように感じることがあります。

しかし、字幕はあくまで翻訳された情報です。字幕が正確でも、元動画が古かったり、別の出来事の映像が使われていたり、動画の一部だけが編集されていたりする可能性があります。

そのため、「字幕がある=事実である」と考えるのではなく、翻訳とファクトチェックを別々に確認することが重要です。

正確な情報を「伝える」ために

動画を翻訳して紹介する場合は、まず元動画を確認し、撮影された日時や場所、発言の前後関係を確認します。そのうえで原文の意味やニュアンスを理解し、正確に翻訳します。

さらに、事実として確認できる内容については、公的資料や一次情報などを調べます。確認できない情報については、無理に「正しい」「間違い」と断定しないことも重要です。

インターネットでは、海外の動画が短時間で世界中に拡散されます。その一方で、誤訳や誤解を招く字幕、切り抜きによる文脈の欠落などによって、元の情報とは異なる形で伝わってしまうこともあります。

だからこそ、動画翻訳では「早く訳すこと」だけではなく、「正しく伝えること」を意識する必要があります。

翻訳は言葉を伝えるための作業。ファクトチェックは事実を確かめるための作業。

この二つを組み合わせることで、海外の動画をより正確に、そして誤解の少ない形で視聴者に届けることができるのではないでしょうか。

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