はじめに

海外市場への進出や外国人材の受け入れが進む中、企業が外国語で情報を発信する機会が増えています。

企業Webサイト、商品カタログ、会社案内、採用情報、マニュアル、SNSなど、多言語化が必要となるコンテンツは多岐にわたります。

近年ではAI翻訳の進化により、こうした大量の文章を短時間で翻訳できるようになり、翻訳業務の効率も大きく向上しました。

一方で、AI翻訳を活用する場合でも、人による確認が欠かせない部分があります。

その一つが「ファクトチェック(事実確認)」です。

翻訳された文章に誤りがあれば、単なる翻訳ミスでは済まない場合があります。企業名や商品名、数字、サービス内容などの誤りは、企業そのものに対する信頼やブランドイメージにも影響する可能性があるためです。

「正しく訳す」だけでは十分ではない

翻訳の品質というと、文法や単語が正しいかどうかをイメージする方も多いでしょう。

もちろん、正確な翻訳は重要です。

しかし、企業の多言語コンテンツでは、それだけでは十分とはいえません。

例えば、原稿に記載された商品情報が古くなっていた場合、その文章を正確に翻訳しても、海外の読者には誤った情報が伝わってしまいます。

企業名や商品名についても、正式名称が変更されている可能性があります。

つまり、「原文どおりに訳すこと」と「現在、正しい情報を伝えること」は、必ずしも同じではありません。

ブランドイメージを左右する「名称」と「数字」

特に注意したいのが、企業名、ブランド名、商品名、サービス名などの名称です。

AI翻訳では、企業が定めた正式名称ではなく、単語の意味に基づいて別の表現へ置き換えられる可能性があります。

また、同じ商品名や部署名が資料ごとに異なる表現になれば、表記揺れが発生し、企業としての統一感が損なわれます。

数字についても注意が必要です。

売上高、従業員数、商品価格、製品仕様、日付、数量などに誤りがあれば、読者の判断を誤らせる可能性があります。

さらに、数字の区切り方や日付、通貨などは国や地域によって表記方法が異なる場合があります。

そのため、単に原文と数字が一致しているかだけでなく、対象地域の読者にとって分かりやすく、自然な表記になっているかも確認することが大切です。

「現在も正しい情報か」を確認する

ファクトチェックでは、情報の正確性だけでなく、その情報が現在も有効なのかという視点も重要です。

例えば、会社所在地、営業時間、商品仕様、サービス内容、価格、問い合わせ先などは、時間の経過とともに変更されることがあります。

過去に作成した日本語原稿を翻訳する場合には、原稿そのものが現在の情報と一致しているかを確認する必要があります。

古い情報を正確に翻訳しても、読者にとっては「正しい情報」にはなりません。

特に海外向けの情報発信では、一度公開した情報が長期間閲覧されることもあるため、公開前に最新情報との照合を行うことが重要です。

現地での受け取られ方も確認する

多言語翻訳では、文法的に正しいだけでなく、現地の読者にどのように受け取られるかも重要です。

日本では一般的な表現でも、海外では別の名称が使われていたり、意味が異なって受け取られたりする場合があります。

特に広告、キャッチコピー、商品説明など、ブランドイメージに直結するコンテンツでは、現地の文化や商習慣を理解した翻訳者による確認が有効です。

必要に応じて現地在住の翻訳者やネイティブに確認することで、「現地で実際に通用する表現なのか」という視点を加えることができます。

AI翻訳と人によるチェックを組み合わせる

AI翻訳とファクトチェックは、相反するものではありません。

AIには、大量の文章を短時間で処理できるという大きなメリットがあります。

一方、人には、企業が定めた正式名称やブランド上のルール、最新情報、現地での使用状況などを確認し、状況に応じて判断できる強みがあります。

そのため、

AIで翻訳する
→ 名称や数字を確認する
→ 最新情報と照合する
→ 必要に応じてネイティブが確認する

という工程を組み合わせることで、効率と品質を両立しやすくなります。

弊社でも納品前の社内チェックにおいて、名称や数字、用語などを確認しています。名称については「大文字か小文字か」「スペースが必要か」などをしっかり確認致します。必要に応じて現地在住の翻訳者にも確認を依頼し、現在その地域で通用する表現なのかという点まで確認しています。情報は「鮮度が命です」ので念入りにチェック致します。

まとめ――ファクトチェックはブランドを守る工程

多言語翻訳におけるファクトチェックは、単に翻訳ミスを見つけるための作業ではありません。

企業名や商品名、数字、製品情報、サービス内容などが正しいかを確認し、さらに現地の読者に適切に伝わるかを確認することで、企業が発信する情報そのものの信頼性を高めることができます。

海外の顧客や取引先にとって、外国語で書かれたWebサイトやカタログは、その企業を知るための重要な情報源です。

だからこそ、

「正しく訳す」だけでなく、「正しい情報を、適切に伝える」こと。

これが、多言語翻訳において重要なポイントです。

AI翻訳によって翻訳作業が効率化される今だからこそ、最後に情報の正確性や現地での受け取られ方を確認する「人の目」が、企業のブランドイメージを守る重要な役割を担っています。