翻訳者コラム

ナイウェイ翻訳サービスの翻訳者による翻訳に関するコラム

NAIway(ナイウェイ)翻訳サービスの翻訳者の方々に、テーマ別のコラムを書いていただきました。
日々の翻訳作業の中で感じていること、翻訳者として礎にしていること等、翻訳に関しての興味深い内容を伺い知ることができます。

1
翻訳者を目指すきっかけ
なぜ翻訳の道へ

  • 分 野:サブカルチャー・生物学・食品科学・心理学・IT・バイオ
  • 対応言語:日本語→タイ語 英語→タイ語
  • 翻訳歴:約7~8年
「アニメ・漫画を読みたくて」から始まった

元から日本のサブカルチャー(アニメ、漫画など)が好きです。翻訳版を待つのが我慢できなかったから日本語の自習を始めました。続けていくうちに今までやってきた分野よりも上手くなっていてもしや自分はこの分野ならいけるのでは?とモチベーションが湧いてきました。
「塵も積もれば山となる」という言葉のように、毎日日本語と関わってきたおかげで自分でも驚くほど上達になりました。そこから翻訳活動を始めました。最初は趣味程度で、好きな4コマ漫画やアニメを翻訳して回りの人たちやブログに公開したりしました。せっかく日本語スキルを習得したから活かしたいなという思いで選んだのが翻訳の仕事です。

しばらくして自習しても限界があると感じて日本の方と会話するようになりました。ある日ふと思い浮かんだことですが、遠いところでもこんなに自分と気が合う人がいるんだ…ただ違う言葉で話すだけでお互い触れ合う機会を逃すなんて勿体無い。それに外国語を理解してるからこそ知れたこともありました。だから色んな人のために「架け橋」になりたいと思うようになりました。

2
翻訳に一番重要な事・大切な事

作者が伝えたいことをつかむことから

最近どうやっていい翻訳を作るかと聞かれた。よく考えて、次のような答えを思いついた。いい翻訳を作るには原文の作者が伝えたいことをつかんで、それを自然な対象言語に直すことだ。第一歩は原文の作者が伝えたいことをつかむことだ。

翻訳とは原文の言語の言葉を対象言語の言葉に置き換えることだと思う人がいるかもしれないが、作者が伝えたいことをつかまないと、正しく翻訳できない可能性がある。原文の言語の言葉と同じ意味を持つ対象言語の言葉を使っても、文の意味が伝わるとは限らない。簡単な例は慣用句だ。慣用句はイメージを作って、そのイメージで意味を伝える。例えば、「油を売る」という慣用句を例として考えれば、それは油の販売とは関係ない。作者が伝えたいことは「仕事を怠ける」ということだ。言葉の意味は文脈によって違うため、言葉自体ではなく、意味が大切だ。

原文の作者が伝えたいことが分かったら、自然な対象言語の言葉に直さなければならない。いい訳文は翻訳された文という感じがない。対象言語のネイティブスピーカーが訳文を読んだ際に、その文が訳文ではなく、ネイティブスピーカーが一から書いたと思うような文でなければならない。そうするには、言葉を加えなればならないか削除しなければならないこともある。例えば、日本語では、ものをはっきりと言わなくても文脈でわかることが多い。しかし、英語では、文脈に任せることはできず、はっきりと言う必要がある。特に主語や目的語がそれにあたる。
いい翻訳を作るには原文の作者が伝えたいことをつかんで、それを自然な対象言語に直すことが必要だ。

3
翻訳者の役割と今後について

人間にしか適切な作業ができないタスクは人間に任せる

先日日本語から英語に訳された文章を読んだ際、「白羽の矢が立つ」が « a white arrow was put up »と訳されていました。それはもちろん直訳した不適切な翻訳で、適切に翻訳するにはその表現が持つ本当の意味を調べる必要があります。これは、特に注意を払って翻訳することが大切となる一例です。一つの言語を全く異なる言語に翻訳する際は、直訳できないため対象言語の適切な言葉や表現を考え調整を行うことが翻訳者の仕事です。一つの言語において、多くの言葉や表現がその国の文化と繋がっています。そのため、翻訳対象の言語に同じ言葉や表現が存在していない可能性もあり、翻訳者は対象言語の同じ意味の言葉や、自然に聞こえる表現を見つけなければなりません。このような作業は、コンピューターや電子辞書が自動的に対応できるものではありません。言い換えれば、100%適切に翻訳することは人工知能でできる仕事ではありません。そのため現在、翻訳者の役割は非常に重要であると言えます。

近年、技術やテクノロジーがますます速いスピードで進化しており、コンピューターなどのハイテク機械が人間の代わりに様々なタスクを行っていますが、もちろん、その新しいテクノロジーがどのような仕事にも使えるというわけではありません。今後の世界では、人工知能を上手く活用しつつ、人間にしか適切な作業ができないタスクは人間に任せなければならないと思います。翻訳は、こう言った仕事の一つです。

最後に、これは自分自身の翻訳者としての経験に基づく意見ですが、現在、エヌ・エイ・アイ株式会社のように丁寧な翻訳作業を行い、様々な翻訳者と連携して翻訳者の意見と仕事を大切にしながら、常に隅々まで気を配り質の高い翻訳をされている翻訳会社は非常に稀で、貴重であると思います。

4
翻訳し易いもの・
翻訳し難いもの、その差とは

日本語の長文は意味がつかみにくく翻訳しづらい

翻訳は文章の意味を理解した上で多言語に正確に表現して意味を伝えることが重要だと思います。文章の意味を理解する為に、文章に使用される用語と文章の構成(文法)を理解する必要があります。用語は業界により異なり、それぞれ時間をかけて学ぶ必要がありますが、文章の構成はその言語を話す人数ほどあります。

文章は長いほど構成が複雑になり、意味もつかみにくくなります。どの言語でも長文は可能ですが、特に日本語は述語が語尾にあるという特徴で長文になりがちです。文章を書く際に読む手を考慮せず好きなだけ単語を入れた上で前後関係もあまり深く考えず文字が何行までもずらっと並んだ冒頭に出ていた単語も途中で再び出てきてピリオドがあるところまで読まないと意味が分からないこのような長文は、翻訳者はともかく読む手でさえ読むのに疲れるでしょう。

一方、簡潔で表現する短文は読むにさほどの苦労がなく、意味もすぐに理解できます。技術資料はこのような特徴をほとんど持っています。効率性を考慮すると、簡潔な表現を用いた文章は長文よりも意味を理解しやすく翻訳も早くできるということです。文章を書く際に長さに意識して簡潔な表現を使用した方が良いのではないかと思います。

5
翻訳者冥利につきる思い出、
苦い思い出

努力を尽くした先にお客様の満足がある喜び

NAIway翻訳サービスのスタッフの皆様、お客様方、翻訳者の皆様、いつも大変お世話になっております。
私は翻訳の仕事を初めて現在22年になります。これまでに行ってきた中でも、やはり駆け出しの頃の仕事は記憶に深く刻まれております。 私が翻訳の仕事を始めた1990年代後半はまだインターネット情報もそれほど整っていたわけではなく、仕事の資料といえば辞書とその分野の専門書が頼りでした。

当時、スウェーデン語で書かれたあるノーベル化学賞受賞者の研究内容紹介を翻訳致しました。研究の概要なので1300W程度の短いものだったと記憶しておりますが、最先端の化学分野ですから一読しただけではまったく内容を読み取ることはできません。そこである大学の図書館に行き、その教授の英語と日本語の論文を検索し、ノーベル賞受賞の背景を必死で調査致しました。そして大学の図書館に自分のスウェーデン語辞書を何冊も持ち込み、検索した資料をずらっと並べて3日ほどかけて翻訳し、納品致しました。

翻訳会社の方を通じ、化学に関してはまったくの門外漢ですので翻訳内容に不備がありましたら申しわけありません。ぜひ訂正すべきところをご指摘くださいとお伝えしたところ、お客様からは『こんなに読みやすい翻訳文は初めてです』という高評価をいただきました。

翻訳者が仕事をしていて何よりも翻訳者冥利に尽きるのは、お客様がご満足してくださり、それを伝えていただいた時ではないかと思います。
翻訳会社の皆様がお仕事を紹介してくださる時、その向こうには当然ご注文くださるお客様がいらっしゃいます。お客様の『ご満足』を糧として、今後も精進したいと思います。

ナイウェイの翻訳者コラム

ページの上部へ移動