「調査票を現地語に翻訳したのに、なぜか回答がバラバラで使いものにならない—」。海外市場調査に携わる担当者が一度は直面するこの悩み。実はその原因の多くは、翻訳の"上手さ"ではなく、翻訳の前後にある工程に潜んでいます。現地の商品名、価格、流通業態を確認しないまま調査票を作れば、回答者は「知らない商品」について答えることになり、データはひずみます。海外市場調査の精度を高める本当の鍵は、翻訳そのものではなく、翻訳を取り巻く現地販売情報の確認にあるのです。
海外市場調査の精度を高める鍵は「現地販売情報」の確認にある
海外市場調査というと、「調査票を現地の言語へ翻訳すれば十分」と思われることが少なくありません。しかし実際には、それだけでは正確な調査結果を得ることはできません。海外の消費者は、日本と異なる商品名で商品を認識し、日本とは違う価格帯で購入し、日本にはない業態の店舗で買物をしています。日本国内の情報をそのまま翻訳して調査票を作成すると、回答者が混乱し、本来知りたかったデータが得られない—これは決して珍しいケースではありません。
日本貿易振興機構(JETRO)などが公表する海外進出関連の調査でも、失敗要因のトップに挙げられるのは「現地市場への理解不足」と「日本での成功体験の過信」です出典。市場調査の段階でこのズレを埋められなければ、その先の商品開発・価格戦略・販促設計まで、すべてが歪んだ土台の上に積み上がることになります。
だからこそ、市場調査の品質を高めるためには、 ・調査票の翻訳 ・ファクトチェック ・ローカライズ ・現地販売商品名の確認 ・現地販売金額の確認
これらをバラバラの作業ではなく、一つの連続した流れとして設計することが重要です。
調査票翻訳は「設問の目的」を伝える仕事
市場調査では、たった一文字の違いが結果を左右します。
例えば「購入したことがありますか」という質問と、「普段利用していますか」という質問。日本語で見ればどちらも似た問いに感じられますが、回答者が思い浮かべる内容はまったく別物です。前者は一度でも購入経験があれば「はい」と答えられますが、後者は継続利用を前提としているため、回答率が大きく変わります。
これを英語に訳す際も同様で、"Have you ever purchased"と"Do you regularly use"では、集まってくるデータの意味が根本的に異なります。中国語やタイ語のように敬語や語順のニュアンスが強く出る言語では、この差はさらに拡大します。
つまり、調査票翻訳は、単語の置き換え作業ではなく、設問の目的・分析意図まで理解した上で行う「意図の翻訳」なのです。翻訳者が「この設問は購入経験を測りたいのか、継続利用の実態を測りたいのか」を理解していなければ、どんなに文法的に正しい翻訳でも、調査データは分析に使えないものになってしまいます。
ファクトチェックが調査結果の信頼性を支える
翻訳が自然でも、情報が間違っていては意味がありません。
例えば海外で販売されている飲料・化粧品・家電製品は、日本とは商品ラインアップが異なることが多々あります。日本ではとっくに販売終了している商品が、海外では現役の主力製品として棚に並んでいるケース。逆に、日本で人気の新商品が海外にはまだ投入されていないケース。どちらも珍しくありません。
さらに国ごとに違いが出やすいのは次のような要素です。
- 内容量(米国は大容量、東南アジアは小分けサシェが主流)
- 成分(EUで規制される成分が日本では使用可、あるいはその逆)
- パッケージ(宗教的配慮でハラル表記が必須の国も)
- カラー展開(現地の嗜好に合わせて限定色を展開)
- 販売チャネル(ドラッグストア/薬局/スーパー/ECのどこで買われているか)
こうした違いを確認せずに調査票を作成すると、回答者は「存在しない商品」について質問されることになり、「知らない」「使ったことがない」という回答ばかりが積み上がってしまいます。それは真実を映したデータではなく、単に設計ミスを映したノイズです。
だからこそ、翻訳の前後には最新の販売状況を確認するファクトチェックが欠かせません。メーカー公式サイト、現地EC(Amazon各国版、Lazada、Shopee、Tmallなど)、現地小売のチラシまで確認して、「今、その国で、その商品がどう売られているか」を押さえることが調査データの信頼性を支えます。
ローカライズは「現地で理解できる表現」に変えること
ローカライズとは、単に言語を置き換えることではありません。現地の文化・生活習慣・商習慣に合わせて内容を調整する作業です。
分かりやすい例が「コンビニ」です。日本では24時間営業のコンビニエンスストアが全国に約5万5千店あり、生活インフラとして定着しています。ところがドイツでは、法律により日曜・祝日の小売店営業が原則禁止され、平日も営業時間が制限されているため、日本型のコンビニは基本的に存在しません出典。代わりに広く利用されているのが「Späti(シュペーティ)」や「Kiosk(キオスク)」と呼ばれる小規模店舗で、夜間や日曜にも営業する飲料・タバコ・軽食中心の家族経営店です出典。
つまり、「コンビニでよく買うものは?」という設問をそのままドイツ語に訳しても、回答者の頭には日本人が想像するのとまったく別の店舗イメージが浮かびます。この場合、調査の目的に応じて「小規模食品店」「駅の売店」「Späti」など、現地の人が実際にイメージしやすい表現へ置き換える必要があります。
同様に、「ドラッグストア」も国によって業態が異なります。米国のCVSやWalgreensは処方薬・OTC・食品・雑貨まで扱う総合業態ですが、ドイツの"Drogerie"(dm、Rossmannなど)は処方薬を扱わず、日用品と化粧品が中心。日本のマツモトキヨシのイメージで設問を作ると、回答が大きくブレます。
ローカライズの役割は、回答者が違和感なく理解できる言葉に置き換えることで、回答精度そのものを引き上げることです。これは単なる訳語の選択ではなく、市場調査設計の中核と言えます。
現地販売商品名は必ず確認する
意外に見落とされやすいのが、現地販売商品名です。同じメーカーの商品でも、海外では名称が変更されているケースは実は非常に多いのです。
有名な例では、江崎グリコの「ポッキー」はヨーロッパでは「MIKADO(ミカド)」という名称で販売されています出典。三菱の「パジェロ」はイギリスでは「SHOGUN(ショーグン)」、スペイン語圏では別名で流通しています。これはスペイン語の"Pajero"に俗語的に不適切な意味があるためで、輸出先の言語で忌避語にあたる場合に改名される典型例です出典。ホンダのフィットも欧州では「Jazz」の名で販売されています。
もし日本の商品名のまま調査票に記載すると、「その商品は知らない」という回答になってしまう。しかし実際には、その回答者は毎週のように現地名でその商品を買っているかもしれない—これは調査業界で「ヒヤリハット」としてよく共有される失敗パターンです。ある調査会社の担当者は、「日本名で聞いていた時の認知率が10%台だったのが、現地名に差し替えたら70%を超えた」というケースを報告しています。
現地販売名を1つ確認するだけで、認知率・利用率・購入意向のすべてが正しく測れるようになる。これほど費用対効果の高い工程はありません。
現地販売金額も重要な調査項目
価格も国ごとに大きく異なります。為替レートだけでなく、
- 関税(品目・原産国により大きく変動)
- 流通コスト(輸送距離・保管条件)
- 現地の物価水準(購買力平価)
- 販売チャネル(百貨店/量販店/ECで価格帯が異なる)
- ブランド戦略(プレミアム価格設定か、大衆価格か)
これらの要因が複雑に絡み合って、最終的な店頭価格が形成されます。
例えば日本で1,000円の菓子が、東南アジアでは高級輸入品として2,500円相当で販売されることは珍しくありません。逆に日本では高価格帯の家電が、生産国である中国では日本の半額以下で流通しているケースもあります。国際的な越境EC調査でも、価格設定において「現地の消費者の購買力」を重視すると回答した企業は50.9%にのぼります出典。
このような商品について「この価格なら購入しますか」という設問を、日本価格を前提にして作ってしまうと、実際の購買行動とはまったく異なる回答が集まってしまいます。「500円なら買いますか?」と聞いても、現地で3,000円で売られている商品ならば、回答者は現実感を持って答えられません。
現地販売金額を確認したうえで、現地通貨・現地の価格帯で設問を設計すること。これが市場調査の信頼性を担保する最後のピースです。
「とことんキッチリおつきあい。」——NAIwayが選ばれる理由
海外市場調査では、「翻訳ができれば終わり」ではありません。
調査票翻訳を行い、ファクトチェックによって情報の正確性を確認し、ローカライズによって現地の文化・生活に合わせた表現へ調整する。そして、現地販売商品名や現地販売金額まで確認することで、初めて現地の実態に即した調査票が完成します。この5工程はどれか1つでも欠けると、集めたデータの信頼性が大きく揺らぎます。
企業が海外市場で正しい意思決定を行うためには、信頼できる調査データが不可欠です。そしてその品質は、目に見えにくい翻訳工程の一つひとつに支えられています。派手さはありませんが、この地道な積み上げこそが、後の商品開発・価格戦略・販促設計の成否を分けるのです。
NAIwayでは、多言語翻訳の技術力だけでなく、調査票翻訳・ファクトチェック・ローカライズ・現地販売商品名や現地販売金額の確認まで含めた一貫した品質管理を重視しています。各言語のネイティブ翻訳者と現地リサーチ担当がタッグを組み、「翻訳」で終わらせず「使える調査票」に仕上げるまで伴走します。
海外市場調査の精度向上をお考えの企業様、初めての海外進出で調査票の作り方に不安のある企業様は、ぜひお気軽にご相談ください。「とことんキッチリおつきあい。」——それが、私たちNAIwayのお約束です。
NAIwayでは、多言語翻訳だけでなく、品質QAS動画まるごとローカライズ・調査票翻訳・ファクトチェック・ローカライズ・現地販売商品名や現地販売金額の確認まで含めた品質管理を重視しています。海外市場調査の精度向上をお考えの企業様は、ぜひお気軽にご相談ください。
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