インバウンド回復で増える外国語案内――機械翻訳だけでは防げない「ちょっとした誤訳」とは?

訪日外国人旅行者の増加に伴い、駅やホテル、商業施設、飲食店など、さまざまな場所で多言語による案内を目にする機会が増えました。

英語はもちろん、中国語や韓国語などの案内表示を整備することは、外国人旅行者が安心して施設を利用するためにも重要です。

一方、多言語化には当然コストがかかります。そのため、翻訳コストや作業時間を抑える目的で、機械翻訳やAI翻訳を利用し、その翻訳結果をほぼそのまま掲示物に使用するケースも見られます。

確かに、現在の機械翻訳の精度は以前と比べて大きく向上しています。しかし、「意味が通じる翻訳」と「現地の人に自然かつ正確に伝わる翻訳」は、必ずしも同じではありません。

日本語独特の表現や敬語は機械翻訳の落とし穴

日本の施設案内には、独特の言い回しが数多く使われています。

例えば、「ご利用いただけます」「お控えください」「ご遠慮願います」「お申し付けください」といった表現です。

日本語では相手への配慮を示すため、直接的な表現を避け、敬語を使って柔らかく伝えることがよくあります。

しかし、それを機械的に外国語へ置き換えると、不自然に丁寧になったり、反対に本来の禁止・注意の意味が弱くなったりすることがあります。

施設の掲示物で大切なのは、日本語の文法を忠実に再現することではありません。「何をしてほしいのか」「何をしてはいけないのか」を利用者が瞬時に理解できることです。

そのため、原文の意図を理解した上で、現地語として自然な表現へ調整するローカライズが必要になります。

同じ単語でもでは訳が変わる?

さらに機械翻訳で注意したいのが、日本語では同じ単語でも、実物によって外国語の訳語が変わるケースです。

最近、弊社では水を入れる「ボトル」に関する翻訳を扱いました。

日本語では、小さな容器でも大きな容器でも「ボトル」と表現することがあります。しかし、中国語では実物の形状や大きさ、用途によって適切な表現が異なります。

例えば、小型のボトルであれば「瓶」、ウォーターサーバーなどに使用する大型の水容器であれば「桶」など、実物に合わせて訳語を選択する必要があります。

ところが、機械翻訳に「ボトル」という文字情報だけを入力しても、翻訳システムにはそれが500ml程度の小さな容器なのか、大型の水容器なのかが分かりません。

文章としては一見正しくても、実際の設備と照らし合わせると「まったく違うもの」を指してしまう可能性があるのです。

今回のケースでは、人によるチェックを行い、実際に指しているものを確認することで、適切な中国語表現へ修正することができました。

「正しい単語」より「何を指しているか」が重要

このような問題は「ボトル」に限りません。

「カウンター」「ロッカー」「精算機」「受付」「売店」など、日本の駅やホテル、商業施設で日常的に使われる言葉にも、同じような問題が起こり得ます。

同じ日本語でも、設置場所や設備の形、使用目的が変われば、外国語で最も自然な名称も変わることがあります。

つまり、施設案内の翻訳では**「この日本語を外国語で何と言うか」だけでなく、「この言葉は実際に何を指しているのか」を確認することが重要**なのです。

NAIway翻訳サービスが支える「伝わる翻訳」

NAIway翻訳サービスでは、英語・中国語・韓国語をはじめとする多言語翻訳を中心に、AI翻訳のポストエディット、ネイティブチェック、多言語DTP、動画字幕翻訳など、幅広いサービスを提供しています。

近年では、 「AI翻訳を活用したいが、公開できる品質に仕上げたい」 「海外のお客様に正しく情報を届けたい」 「既存の翻訳の品質を見直したい」 といったご相談も増えています。

私たちは、単に文章を別の言語へ置き換えるのではなく、お客様の目的や情報の利用シーンに合わせた「伝わる翻訳」を大切にしています。飲食、観光、製造、ITなど各分野に精通した翻訳者が、原文の意図と読み手の文化背景の双方を踏まえた訳文をご提供いたします。

機械翻訳+人力チェックという選択肢

だからといって、機械翻訳を使わない方がよいということではありません。

大量の文章を短時間で処理できる機械翻訳は、多言語化を効率よく進めるための非常に有効なツールです。

重要なのは、機械翻訳の結果を完成品と考えないことです。

機械翻訳後に翻訳者が文章を確認・修正する「ポストエディット」を行えば、機械翻訳のスピードやコスト面でのメリットを活かしながら、不自然な表現や誤訳のリスクを減らすことができます。

特に駅、ホテル、店舗など、不特定多数の外国人が目にする文章では、たった一つの訳語の違いが利用者の混乱につながることもあります。

インバウンド需要が高まり、多言語表示が「あれば便利」から「必要なサービス」へと変わりつつある今だからこそ、翻訳の「量」だけでなく「伝わり方」にも目を向ける必要があります。

NAIwayでは、機械翻訳を活用した案件についても、外国語のネイティブによるポストエディットや人力チェックを行い、原文だけでは判断できない場合には、実際の用途や対象物まで確認しながら適切な表現をご提案しています。

機械翻訳を上手に活用し、最後は人の目で「本当にこの表現で伝わるのか」を確かめる。

そのひと手間が、外国人旅行者にとって分かりやすく、安心して利用できる多言語案内につながるのではないでしょうか。