海外展示会で商談機会を逃さないための「品質QAS動画まるごとローカライズ」

~現地では"普通"が、日本の"普通"とは違います~

海外展示会は、多くの日本企業にとって、新規顧客や現地代理店と顔を合わせられる年に数回しかないチャンスです。1ブースあたりの出展コストは、渡航費・通訳・什器を含めれば数百万円規模になることも珍しくありません。1日の来場者の中で、本気で立ち止まってくれるのはせいぜい数十人。その数十人にどう刺さるかが、展示会のROIをほぼ決めます。

そのため、会社紹介動画や製品紹介動画を大型モニターで流し、外国語字幕や外国語ナレーションを付けてアピールする企業も年々増えてきました。AI翻訳とAI音声の進化で、以前なら数百万かかった多言語動画が、短期間・低コストで作れるようになったことも追い風になっています。

ところが、現場ではこんな声を耳にします。

「動画はきれいに翻訳されているのに、思ったほど商談につながらない」

「現地代理店から『この表現は少し違う』と指摘された」

「動画を見せたあと、お客様への説明を一からやり直すことになった」

この原因は、「翻訳の品質」ではなく、ほとんどの場合、ローカライズの品質にあります。


翻訳は正しかった。でも商談は進まなかった

ある日本の製造装置メーカーが、欧州の展示会に出展したとします。

会社紹介動画を英語化し、AI音声でナレーションも乗せた。担当者は「これで準備万端」と思っていました。

ところが当日、ブースに足を止めたバイヤーから出た質問はこんなものでした。

  • 「この規格は私たちの国でも使われていますか?」
  • 「この寸法、インチ換算するとどれくらいですか?」
  • 「この安全基準はEU規格ですか?それとも日本のJIS基準ですか?」
  • 「保証期間の起算日は、出荷日ですか、設置日ですか?」

動画では確かに説明していました。けれど、それは日本のお客様向けに作られた情報設計のまま、ただ言語だけが英語になっていた。バイヤーが本当に知りたかった切り口とはズレていたのです。

翻訳は間違っていません。

ただ、現地で意思決定をする人にとっての「読みやすい順番」「触れてほしい論点」になっていなかった。これがローカライズ不足の典型です。展示会という極端に短い接点では、この差が「次のアポにつながるか/その場で離脱されるか」を分けます。


「展示会の動画」は、自宅で見るYouTubeとは前提が違う

ここでひとつ、見落とされがちな視点があります。展示会で流す動画は、自宅でじっくり見るコンテンツではないということです。

展示ブースの動画には、特殊な制約があります。

  • 音はほぼ聞こえない。会場全体のざわめき、隣ブースの大音量。来場者がスピーカーの真ん前に立っても、ナレーションは断片しか届きません。
  • 見られるのは最初の5〜10秒。通路を歩く人の視界に入って、足を止めるかどうかはこの一瞬で決まります。
  • 見る人は途中から見る。冒頭からきれいに見てくれることはまずありません。30秒のループのどこから入っても、何の会社で、何を売っているのかが伝わる必要があります。
  • 視聴距離が遠い。2〜5メートル離れた位置から見られるので、字幕の文字サイズと行数の設計を間違えると、そもそも読めません。

AI翻訳に動画を放り込んでも、こうした「展示会というフォーマット特有の最適化」は一切行われません。日本語版の字幕タイミングを、文字数の多いドイツ語やスペイン語にそのまま流用すれば、当然画面からはみ出します。アラビア語のように右から左に流れる言語を入れれば、レイアウトそのものを組み直す必要が出てきます。

「翻訳した」だけでは、展示会のブースで戦える動画にはなりません。


現地では「普通」が違う

海外向け動画では、日本での当たり前が、現地ではまったく当たり前ではありません。

単位ひとつとっても、日本ではmm・cm・kgが標準ですが、北米ではインチ・フィート・ポンドが日常です。「30cm」と書かれても、アメリカの現場担当者は反射的にイメージが湧きません。換算値の併記や、現地単位への置き換えが必要になります。

日付も同じです。「2026/03/05」は日本では3月5日ですが、欧州や多くのアジア諸国では5月3日と読まれます。新製品の発売日、保証期間の起算日、納期。商談の核心に関わる数字が2か月ずれて伝わるのは、ただの誤解では済みません。

通貨や税表記も油断できません。「¥1,000,000」とだけ書かれていても、相手はいまドルでいくらなのか、税込みなのかを即座に判断できない。展示会で「だいたい1万ドルくらいです」と口頭で補足できるならいいですが、動画はその場に営業がいない時間も延々と流れ続けるのです。


見落とされがちな「規格」と「法律」

製造業、医療機器、化学、食品業界では特に重要なのが、各国の規格・法規制です。

CEマーキング、UL認証、FDA関連の表現、RoHS、REACH、各国の安全表示。これらは、対象国によって求められる表現も、禁止される表現も異なります。

たとえば医療分野では、「治療する」「治る」といった言葉ひとつとっても、国によって薬機法に相当する規制の縛りが大きく違います。日本ではセーフだった表現が、米国ではFDAの観点でアウトになることもある。

法規制の最終確認は、その国の専門家による精査が必要です。ただ、その前段階で「海外向け動画として明らかな違和感や地雷ワードがないか」をふるい落としておく工程は、絶対に欠かせません。展示会で配ったQRコード経由でその動画が拡散し、SNSで「誤解を招く表現」として晒される—という事故は、現実に起きています。


色・デザイン・人物像にも、文化のフィルターがかかる

動画は文章だけで成り立っていません。

背景色、アイコン、人物写真、ジェスチャー、イラスト。画面に映るすべてが、見る人にメッセージを送っています

日本でおめでたい色が、別の文化圏では喪を意味する。OKサインがある国では侮辱になる。親指を立てるサインも同様です。宗教的配慮が必要な地域では、人物の服装、肌の露出、握手のシーンが思わぬ反発を招くこともあります。

さらにもう一段繊細なのが、動画に登場する「人物像」そのものです。

会社紹介動画によく出てくる、笑顔の日本人社員数名。社内の親近感を出すには有効ですが、その動画を多文化な地域の展示会で流したとき、来場者は無意識にこう感じます。

「この会社のお客様は、自分たちのような顔ぶれではないのかもしれない」

これは差別の話ではなく、「自分ごと化できるか」という購買心理の話です。グローバル企業の動画に、いろいろな国籍・年代の人が登場するのには理由があります。映像素材の差し替えまでは難しくても、せめてキャプションや事例紹介の中で「アジア・欧州・北米でこういう導入実績がある」と触れるだけで、印象は大きく変わります。


製品名称は、本当に現地で通じますか?

NAIwayが30年以上、多言語翻訳に携わる中で繰り返し見てきたのが、「同じ製品なのに国によって呼び方が違う」という現実です。

医療機器、工業製品、ソフトウェア、介護用品では、現地で実際に流通している名称と、日本企業が想定している名称が食い違うことが頻繁にあります。社内では「弊社の◯◯シリーズ」と呼んでいても、現地の代理店カタログでは別名で売られていることもある。

展示会では、最初の30秒で「自分たちが探しているカテゴリの会社かどうか」を判断されます。呼び方が現地と違うだけで、検索にもひっかからず、来場者の頭の中で「自分には関係ない会社」に分類されてしまう。これは本当にもったいない損失です。


「英語=世界共通」という幻想

ここも、よく誤解されるポイントです。

英語ひとつとっても、イギリス英語、アメリカ英語、シンガポール英語、オーストラリア英語、インド英語では、語彙も言い回しも違います。アメリカで「elevator」と呼ぶものを、イギリスでは「lift」と呼ぶ。これは有名な例ですが、技術用語、ビジネス用語のレベルになると、もっと細かい差が無数に存在します。

例えば階数表記一つを取っても、アメリカ英語とイギリス英語では違いがあります。アメリカでは1階を “First Floor” と呼ぶのに対し、イギリスでは1階は “Ground Floor”。イギリスで “First Floor” と言うと、日本やアメリカでいう2階を意味します。こうした違いは、施設案内動画や研修動画、展示会ブース案内などでは思わぬ誤解につながる可能性があります。

また、地下鉄の呼び方も、地域によって異なります。ニューヨークでは “Subway” が一般的ですが、ロンドンでは “Underground” または “Tube” と呼ばれます。こうした違いも、海外向け動画や現地案内資料では見落としやすいローカライズ項目です。

ポルトガル語も、ポルトガル本国とブラジルでは表現が違う。スペイン語も、スペインと中南米、さらに中南米の中でもメキシコとアルゼンチンで違う。中国語も簡体字と繁体字、そしてマレーシア・シンガポールの華語ではニュアンスが変わる。

「とりあえず英語版を作って、世界中の展示会で使い回す」というやり方は、コスト効率のように見えて、どの市場にも中途半端に刺さらない動画を量産してしまうリスクがあります。本気で攻めたい市場に対しては、地域別の調整、つまり地域別ローカライズが必要になります。


「全員に同じ動画」では、もう刺さらない

展示会の来場者は、ひとくくりにできません。

  • 即発注を視野に入れたバイヤー
  • 現地で売ってくれる代理店候補
  • 設計や仕様を細かく確認したい技術者
  • 提携や出資を探っている投資家・大企業の事業開発担当
  • 競合企業の市場調査担当

同じ動画を見ても、刺さるポイントはまったく違います。バイヤーは「価格と納期と認証」、代理店候補は「マージンと市場性と他国実績」、技術者は「スペックとサポート」、投資家は「市場規模と差別化」を見ています。

理想を言えば、対象別に動画のバージョンを用意するのが最も強い。ただ、現実にはそこまでの工数はかけられません。だからこそ、ローカライズの段階で「どの層に最も訴求するか」を意識した情報設計が効いてきます。AI翻訳は原稿に書かれていることを忠実に訳しますが、「展示会で誰に響かせたいか」までは考えてくれません。


AI翻訳時代に起きている、もうひとつの問題:「全社、同じような動画」

これは、わりと最近顕在化してきた話です。

同じAI翻訳エンジン、同じAI音声、同じテンプレートを使えば、出来上がる動画はどうしても似てきます。ナレーションのトーンも、字幕の出し方も、構成のリズムも。

展示会会場をぐるりと回ると、ブースのモニターに流れている動画が、どこも妙に似ている—という現象が、実際に起きはじめています。

このとき、来場者の印象に残るのは何か。 動画そのもののクオリティではなく、「この会社は、現地の文脈をちゃんと踏まえている」と感じさせる細部です。現地の単位で書かれている、現地の規格に言及している、現地の実績に触れている、現地の言い回しを使っている。そのひとつひとつが、「ちゃんとこの市場を見に来ている会社だ」という印象を作ります。

AIで誰でも動画を作れるようになったからこそ、ローカライズの解像度がそのまま差別化要素になっています。


動画は「翻訳」ではなく「品質保証」が求められる時代へ

翻訳はAIでもできる。音声もAIで作れる。字幕も自動生成できる。

では、人が介在する価値はどこにあるのか。

それは、「本当に海外で伝わるか」「本当に商談につながる動画になっているか」を確認する品質保証の工程です。誤訳がないかをチェックするだけの作業ではありません。

  • 単位・日付・通貨・規格が現地仕様に整っているか
  • 字幕のタイミングと文字数が、現地言語と画面サイズに合っているか
  • 製品名・専門用語が現地の流通名と一致しているか
  • 映像や色やジェスチャーが、文化的に問題ないか
  • ナレーションの読み・アクセントが正しいか
  • そして、対象とする来場者にとって「響く順番」になっているか

ここまで踏み込んで初めて、展示会という極めて短い接点で戦える動画になります。


NAIwayの「品質QAS動画まるごとローカライズ」とは

NAIwayでは30年にわたり培ってきた品質管理の考え方を、「QAS(Quality Assurance System)」という品質管理方針として体系化してきました。このQASを、動画制作の領域に応用したものが、「品質QAS動画まるごとローカライズ」です。

具体的には、

  • AI翻訳結果の人によるレビュー
  • 外国語ナレーションの音声品質確認(読み・アクセント・略語処理)
  • 字幕品質確認(タイミング、改行、文字数、可読性)
  • PowerPointや動画内テロップ・画像内文字の確認
  • 現地名称・流通名称の確認
  • 地域別ローカライズ(英・中・西・葡・東南アジア各語)
  • 単位・日付・通貨・規格などの表記確認
  • 必要に応じた簡易ファクトチェック

を、ひとつの動画コンテンツとして総合的に品質保証します。

そして大切なのは、すべてを最高品質にすることが目的ではないという点です。展示会で流すループ動画と、商談後にメールで送る詳細動画と、契約書に紐づく安全マニュアル動画では、求められる品質レベルが違います。「どこにコストをかけ、どこをAIに任せるか」を見極めること自体が、ローカライズの専門領域だと考えています。


展示会で終わらせない——動画は出展後にも働く資産

もうひとつ、強調しておきたい視点があります。

展示会で流した動画は、その日その場で終わらせるにはもったいない資産です。

会期後のフォロー営業で、名刺交換した相手にメールで送る。現地代理店候補に「うちはこういう会社です」と渡す。社内の海外事業部や、海外拠点の新入社員向けの研修素材として使う。SNSやLinkedInで二次配信する。YouTubeチャンネルに残し、検索流入の入り口にする。

つまり、展示会向けに作った動画は、そのあと半年〜数年にわたって企業の顔として働き続けます

ここで品質保証の手を抜くと、何が起きるか。

ブースで一度誤解されただけなら被害は最小です。ところが、その動画がフォロー営業で繰り返し送られ、SNSで拡散され、現地代理店の手元に残り続ければ、「ちょっとズレた表現」が、企業ブランドのデフォルトの印象として定着していきます。これは出展費とは比較にならない規模の損失です。

逆に言えば、品質保証ローカライズに一手間かけた動画は、出展費以上のリターンを長期にわたって返してくれます。「展示会用の追加コスト」ではなく、「ブランド資産への投資」として位置づけるのが正確です。


海外展示会で評価されるのは「翻訳された動画」ではない

海外展示会で本当に評価されるのは、「外国語になった動画」ではありません。

現地のお客様が違和感なく内容を理解し、「この会社は、自分たちの市場をちゃんと見ている」と感じてもらえる動画です。

その積み重ねが、商談の第一印象を変え、フォロー営業のしやすさを変え、最終的には現地代理店からの信頼につながります。

AIが多言語化を担ってくれる時代になったからこそ、企業が差を付けられるのは「速く作れたか」ではなく、「現地で本当に伝わるか」のレイヤーです。そして、そこを支えるのが品質保証ローカライズの考え方だと、私たちは捉えています。

海外展示会は、一度の出展で多くの商談機会が生まれる、本当に貴重な場です。

そのチャンスを最大限に活かすために、動画制作の最終工程として、「品質QAS動画まるごとローカライズ」という選択肢を、ぜひご検討ください。

品質QAS動画まるごとローカライズの詳細はこちらから
https://www.naiway.jp/service/others/mov-ai/