翻訳会社の雑学辞書トピック【赤】

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色を表す言葉:赤の翻訳

あか【赤】
色の名。三原色の一つで、新鮮な血のような色。また、その系統に属する緋 (ひ) ・紅・朱・茶・桃色などの総称。

韓国語레드 / ロシア語красный / チェコ語Červené / ベトナム語Màu đỏ

参照元:weblio国語辞典goo国語辞書Glosbe

紅葉の季節になりました。街を歩いていると、公園や家の庭木などにも赤い色が目立っています。 自然の色は多様で複雑です。では、色に関する言葉の世界はどうでしょうか。まずは「赤」を翻訳してみましょう。

「赤」は、もっとも彩度の高い純色のひとつで、JIS規格の基本色です。英語では"red"ですが、実はカタカナ表記の「レッド」はJIS規格で「赤」とは違う色に規定されています。これが記号としての言葉の面白いところです。日本語の中では、「赤」と「レッド」は違うものとして認識されるようになっているのです。

翻訳会社の雑学辞書トピック:赤

しかし、これは規格上のことで、普段私たちが言葉にする「赤」はもっと広範囲な「赤いもの」の総称のように使っています。 「赤」の語源は「暗」に対する「明(アケ、アカ)」と言われ、元々は黄色や紫までを含む明るい色全体を指していたようです。
色の意味の他に「赤の他人」「真っ赤な嘘」などのように、物事が明らかなときに使われます。英語でも、"red cent(びた一文)"、"see red(かっとなる)"、"red hot(熱狂的)"などの使われ方があります。
また、「赤字」は、英語では"in the red"、フランス語では"dans le rouge(赤の中に)"、ドイツ語で"in den Roten(赤で、赤組で)"、と同じように表現します。
英語red 中国語红色 フランス語rouge ポルトガル語Vermelho/vermelha イタリア語rosso

その他に赤い色を表現する日本語はいくつかあります。
古来より日本での基本の赤色は、「朱」「緋」「紅」「丹」があり、それぞれ原料や製造方法が違いました。(丹は現在では日常的にはあまり使いませんが、あの頭が赤い丹頂鶴の丹ですね。)

「朱」はオレンジがかった赤で、まさに印鑑の「朱肉」の色、神社の鳥居をイメージする色ですね。英語では"vermilion"だと思います。
「朱に交われば赤くなる」の語源は、中国の諺「近墨必緇、近朱必赤」(墨に近づけば必ず黒くなり、朱に近づけば必ず赤くなる)ですが、英語では、"He who touches pitch shall be defiled.(石油タールのカス(pitch)に触る者は汚れる)"と言い、こちらは黒い墨のイメージです。
英語vermilion 中国語朱红色 フランス語vermillon

「緋」は黄色みのある明るい赤です。英語では"scarlet"でしょうか。あの有名なシャーロック・ホームズの物語 "A Study in Scarlet" は「緋色の研究」と訳されました。フランス語のスペルは"écarlate"となります。中国では「中国红」「大红」「正红色」などが緋色に近いです。
英語scarlet 中国語中国红 フランス語écarlate

「紅」はやや紫を帯びた赤で、英語では"carmine"が近いかなと思います。「真紅」「深紅」なら"crimson"でしょう。フランス語では"grenat"と言うかもしれません。
また、日本で言う「赤」は中国語では「红色」と書き、一番縁起の良い色とされます。日本でも縁起が良い時は「赤白」ではなく「紅白」と「紅」の文字を使うのはこの影響のようです。
英語crimson; crimson フランス語grenat

その他にも、赤色を表現するために様々な言い方があります。
茜色、レンガ色、えんじ色、ワインレッド、ボルドー、ガーネット、ルビー、バーガンディーなどなど。日本の伝統色としては、唐紅、銀朱、紅赤、深緋(こきあけ)、猩々緋(しょうじょうひ)、紅の八塩(韓紅)、等々。
特にファッション化粧品の世界では、イメージ戦略や差別化のために様々な言葉が駆使されます。
しかし、色の名前が表す範囲は曖昧で、色の呼び名が持つイメージは国によっても違いが出るため、翻訳する場合はいろいろと悩ましいところです。

さて、紅葉には様々な「赤」を見ることができます。この秋、紅葉狩りに行かれる機会がありましたら、紅い色をどれだけ表現できるか試してみてはいかがでしょうか。是非!

2019.11.22

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