翻訳会社の雑学辞書トピック【年】

ナイウェイ翻訳サービスのスタッフによる翻訳に関する雑学辞書トピック

Words of the Year 2019:"they"について

とし【年】
1. 時間を測る単位。太陽暦では地球が太陽の周りを一周する時間。2. 一年間。

英語year /中国語年 / 韓国語년 / ロシア語год / タイ語ปี / イタリア語anno

参照元:weblio国語辞典goo国語辞書Glosbe

英英辞書を出版している米国のメリアム=ウェブスター社が、今年の言葉(Words of the Year)に"they"を選んだとのニュースを耳にしました。

アイデンティティの多様化が大きく許容される時代になり、性別を限定する代名詞によって分類されない/されたくないといった考えを持つ人々の間で、単数形の代名詞に"he"でも"her"でもない"they"を使うことが定着していましたが、その動きが一般的に広まって、同社のウェブサイトMerriam-Websterの"they"の検索件数が、昨年から今年にかけて313%増加したそうです。

翻訳会社の雑学辞書トピック:年

また、アメリカ心理学会(APA)は、今年から学術論文において単数形の"they"を使用することを承認しています。
賛否両論はありますが、単数でも"they", "them"を使うことは英語の用法として確立したようです。

Merriam-Webster (merriam-webster.com) で"they"を検索すると、

1: those ones : those people, animals, or things
2 —used to refer to people in a general way or to a group of people who are not specified

に続いて、

3 a—used with a singular indefinite pronoun antecedent
   b—used with a singular antecedent to refer to an unknown or unspecified person
   c—used to refer to a single person whose gender is intentionally not revealed
   d—used to refer to a single person whose gender identity is nonbinary

と書かれています。

また、
・単数扱いの場合の"they"でもbe動詞はisではなくareを使う
・三単現だけど現在形の動詞にsは付かない

とのことなので、慣れるまでややこしいですね。翻訳の際にも注意が必要です。
"They are students."だけではなく、"They are a student."もあるわけです。

日本語を英訳する場合は、省略された主語を補って、"he"とか"her"とか付ける必要がありますが、文章によっては主語の性別が不明であったり、推理小説での手法のようにわざと主語の詳細を避けたい場合もあり、悩ましいところでした。しかし、今後は"they"を使うことになるのかもしれません。

逆に、日本語訳はどうなりますか?
元来日本語の『彼』は性別は無関係な言葉でしたが、明治以降、欧米の影響で男女を区別するように「彼」「彼女」に分けられました。オリジナルの概念に戻れるのか、それとも新たな言い方が定着するのでしょうか。
単数形の"they"は、日本語にどのような変化をもたらすのでしょう。

2019.12.16

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