翻訳者コラム[テーマ3]

ナイウェイ翻訳サービスの翻訳者による翻訳に関するコラム

翻訳者の役割と今後について

*翻訳歴はNAIwayに登録された年を基準に表記しています。

機械翻訳にはマネのできないことで勝負する

ここ数年、翻訳AI(人工知能)が著しい発達を見せています。最近はディープランニングを利用し、前後の文章から適切な訳語を見つけ出すという「文脈を読む」能力を備えたものも出てきているようです。このまま開発が進めば、5年後、10年後には、翻訳者の手を通さなくても、かなりのテキストが機械翻訳でそこそこ対応できるようになるのではないかと推察されます。では、そうなったとき、翻訳者には何が求められるでしょうか?

私が思いますに、まず一つ目は、対象分野に関する専門性の強さだと思います。 当然のことですが、専門知識があるか否かで、選択する訳語、表現に違いが生まれます。辞書を使って文法に照らして訳していけば、訳文をつくることはできます。しかし、専門性の高い文書の場合、ピントの合った明瞭な訳文に仕上げるには、専門性の面から詰めていくことが必要になる場合も多くあるため、この専門性の強さは大きな武器となります。

二つ目は、読者のことを考えて訳すこと。ストレスなく頭の中にすっと入ってくる訳文にするためには、読みやすさを考えて文の構成を組み立てる、助詞(てにをは)を工夫する等、ターゲット言語の感性を磨き、読者がテンポよく読み進められるように訳文を推敲することが大切です。

それ以外にも、大事なことは色々とありますが、今後人間である翻訳者は、機械翻訳ではマネのできないことで勝負しなければなりません。それは、著者や読者のことを思いながら訳すことであったり、きめの細かい作業であったり、言葉に対して謙虚な姿勢でいることであったり、最終的には質の高い訳文を仕上げることに行きつきます。母語の異なる著者と読み手を翻訳を通して結び付けるという翻訳者としての役割をきちんと理解し、今後もその役割をしっかり果たしていけるよう、日々努めていきたいと思います。

  • 分 野:特許・自然科学・電気/電子・半導体・材料・IT・磁気記憶装置
  • 対応言語:英語→日本語
  • 翻訳歴:約10年
IT翻訳と差別化:「人間性」で翻訳する

最近はITを利用した機械翻訳の精度が向上して誰でも簡単にそれなりの翻訳文が作成できるようになりました。今後も技術の進歩が進み、さらに正確な機械翻訳ができるようになると思われます。囲碁、将棋の世界ではコンピュータが人間を負かしてしまうことが珍しくなくなりましたが、機械翻訳が人間よりも優れた訳文を作成できるようになるとは思えません。それは対話型ロボットがいくら進化しても、人間同士の会話レベルまで決して到達することはないのと同じことです。機械は「人間性」を持つことができないのです。人間の「心」を機械が持つことはできません。従って喜怒哀楽が溢れる味のある翻訳文を機械が作成することはできないのです。

また翻訳者に常に求められているのは、原文を機械的に翻訳するのではなく、書かれている内容の背景を理解して、もし表現の不足していることに気がついたら例えば原文には書かれていなくてもそれを補うことも必要です。これもIT翻訳ではできないことです。今後の翻訳者はこのようにIT翻訳と差別化を図れる翻訳に心がけることが必要です。

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